2007年12月15日

雪女房 2 (村山-方言版)

第二回

ほして、吹雪はいく日もいく日もつづいだっけど。
おなごも、ただでそういく晩も泊めでもらうわげいがねがらっていって、炊事、洗濯、炭焼きの身の回り世話したけっど。
炭焼きは、おなごのあんまりの美しさ、気立てのよさに、すっかり惚れこんでしまって、ある晩、二人は、深い情ばかわす仲になっちまったけど。
炭焼きの仕事は重労働だ。山から木ば切り出し、長さばそろえ、釜入れして、三日三晩、火たきつづけ、五日目に釜出しして、かますさ詰めで、ふもどの村の炭やさおさめらんなね。
家事ばおなごさまかせるごどできっど、炭焼きのはがいぐごとといったら、こりゃ格別だ。
炭焼きは、ここで一考えおこして、おなごさ、思い切って、わ(我)の嫁っ子になってもらわんねべがっていったけど。
おなごは、最初、顔かがやさせで、嬉しそうにしたっけげんとも、すぐ顔ば曇らせで、下ばむいでなにもいわねっけど。
炭焼きはおなごの様子ばみで、なにか事情があることばさっして、それ以上、ほの話すねっけど。
ほんでも二人は、それがらも仲いぐ暮らしたけっど。
幸せなときはまたたくまにすぎで、山の気配も冬から春の気配が、少しずつ近づいできたけっど。
ほうすっど、おなごは何となくそわそわして、落ち着きがなくなり、体のあんばいも悪ぐなってきたっけど。
すみやきは、冬のあいだじゅう、かげひなたなく稼いでけだから、疲れたまったんだべていって、少し休んでよ、養生ばすすめだっけど。
しばらぐおなごは炭焼きの優しさに甘えて、養生したっけど。
まわりの山は雪もとけで、春の兆しが日に日に近づいてきたっけど。
炭焼きは、おなごば心配だっけげんとも、焼き上げだ炭ば、雪のあるうちにふもとさ運ばんなねがら、二三日、留守にする、とにかく体が一番だがら、おどなしく養生してでけろっていって、出かけだっけど。
炭焼きは、ふもとの村の炭やさ炭おさめっど、わらわらど小屋さもどってきたっけど。
ほしたら、おなごの姿はどごにも見えねっけど。
炭焼きは、気がふれだみだいに、おなごば探して、山から山、沢から沢、ほんてんくまなぐ探したげんとも、おなごはみつからねっけど。
山の木の芽はふくらみ、日脚ものびできて、ずいぶんあったかぐなっていだっけど。
炭焼きは、おなごのごどで一つ思い出したごどあったけど。
おなごは、けして火のそばさはよらねっけな、なんでだべ?
炭焼きは、もう、身も心もすっかり腑抜けになっちまって、ままもろくに食わねで、もちろん炭焼きすねぐなったけど。
ふもとの村衆がしんぱいして、たずねでくっこどもあったげんとも、ほいでもさっぱりだっけど。
あるひ、村衆が、またたずねでみだどきのことだっけど。
炭焼きは、釜さ火ばへっで、仕事にかがったけど。村衆もこれで一安心と思ったけど。
ほんでもいつまでまっても炭焼きは、炭ばおさめに村さくっこどなかったけど。
村衆は、あの炭焼きは、釜さ自分で入って自害したんであめがて、噂したっけど。

ほれっ………どんぴんさんすけねぇっけどぉ。
  


Posted by ほんねず at 05:49Comments(0)怖い話

2007年12月13日

雪女房 (村山-方言版)

第一回(全二回)

山深くさ、若い炭焼き、住んでいだっけど。
朝から晩まで、はる、なつ、あき、ふゆ、煤にまみれでよくかせぐ炭焼きだっけど。
ほの冬はよ、雪、いっぱい降って、炭焼きは大忙し。ままも食うひまねぇっけど。
ある晩、まだすごい吹雪、ふいだっけど。
ほうすっど、炭焼小屋さ、「お晩でやんす、お晩でやんす。」って、おなごたずねできたっけど。
若い炭焼きは、こっげな吹雪の晩、こだな山奥さおなご来るなんて、なじぇしたもんだんべって、不思議に思ったけど。もしがしたら、狐狸妖怪のたぐいが、わ(我)ば化かしにきたんであんめぃがと思ったけど。
ほんでも、おなごは表で、「お晩でやんす、お晩でやんす。」って、なにが困ったみでぇな声で言ったけど。
炭焼きは、戸ばあけで見だっけど。
ほごさ立っていだのはよ、色白でここらへんじゃついぞ見かけだごどもねぇ、美しい娘だっけど。
「わ(我)は旅の者でござりあすが、この吹雪で道に迷い、難儀していやす。どうが一晩、泊めでもらわんねえぇべがっす。」って言ったけど。
「ほいずぁ、なんとしたこったべ。まんず中さはいって、火のそばさ、さ、さっ、早く。」って、おなごば小屋さへっだっけど。
おなごは、小屋さはいっど、雪はだいで一息ついだっけど。
ほんでも、囲炉裏のそばさは近よらねで、流しのすみで休んだけど。
つづく
  


Posted by ほんねず at 22:53Comments(0)怖い話