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2007年11月14日

「見えない織物」 (置賜・標準語版)

おばあちゃん、おばあちゃん、とんと昔、とんと昔、お話して。
子供たちの声が子供部屋のベッドから聞こえてきた。
今夜もおばちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心のありようが受け継がれていくのでしょう。

  設定:おばぁちゃんと、孫のさくら(小3)のとんと昔語り


むがし、むかしのお話です。
あの、さくら、年貢って分かる?
わからない!
そう、昔、村は大名と言う殿様が治めていたのね。それで、毎年、田圃で作った米は、半分以上、お城に納めなければならなかったのよ。だから、米を作っていた百姓さんたち、そうだね、さくらのご先祖様たちは、自分達では、米を口にすることはできなかったのよ。
それじゃ、なにを食べていたの。
そうだね、なにを食べていたんでしょうね。
餅。お餅かな。
アハハッ。そうだね。さくらは餅が大好きだものね。
違うの?
違うかも…。
……… さくらがおばあちゃんの顔をのぞき込んでいました
いい、話の続きをしても… おばあちゃんがさくらを見て、にっこり笑っていました。
うん、お願い!
その、お城に納める米のことを「年貢」って言ったのよ。
年貢……年貢って言うんだ。
そう。でも、ある年の夏、冷たい風が吹いて、米が取れない年があったのよ。
お城に納める年貢もなくてね、村の人たちも困り果てて、みんな青い顔して頭をかえてしまっていたのよ。
そんなとき、お城から使いが来て、米がなければ、代わりに、お金で三十両納めよっという命令をしたのよ。
えっ、そんなこと無理な命令だわ。
そうね。無理な話よね。庄屋様のところにも、そんな貯えはないし。
三十両か。もし、三十両払えなかったらどうなるの?
そうね。ただではすまないでしょうね。
それじゃ、どんなことしても何としなければならないのね。
でも、捨てる神あれば拾う神ありっていう、古いことわざがあるけど、ちょうど、そこに、ある男が名乗りを上げたのよ。面構えはふてぶてしく、すこしずるそうで、ニヤニヤ笑いを浮かべでいたぐらい。
誰? その人。
悟介さんって言う人で、村一番の知恵者って言う評判があった人よ。
悟介さん?
そう、悟介さんは、村の人たちを前にして胸をはって、「おれに任せろ」 って言ったのよ。そして、次の朝、一人でお城に出掛けていったんだって。
お城についた悟介さんは、門番に年貢を持って来たから、お殿様に取り次でくれるように頼んだのよ。
では、というこどでお城の広い庭に通されました。
最初に出てきたのは、お役人。
「その方、年貢を持ってきたと言うが、どこにある。どこにもないではないか。」
「いえいえ、ちゃんとここにござります」 って言うと、悟介さんは風呂敷包みを、お役人に差し出したのよ。
「これが、年貢じゃと。」
「へぃ。これは、山のウグイスの声を縦糸に、野原のマツムシの声を横糸にして織り上げました、世にも珍しい綾織でござります。」
「どれどれ、そんな織物はどごにある。」
「へぃ、ここに。」って、風呂敷をほどいて見せたのね。
役人は目を皿にして見つめたけれども、織物なんてどこにもなかったわ。
「こらっ、何にもないぞ。下手な嘘を言うと、ただではすまぬ。そこになおれ。」 って怒ってしまったわ。
それでも、悟介さんは平気の平左。
「お役人、この織物が見えないのですか。もしかして、あなたの目と心はどうも曇っているのではないでしょうか。」
「なにを、百姓の分際で役人を愚弄すとは…… そのままでは捨て置かぬ」 って、顔を真っ赤にして頭から湯気をあげてしまったの。
悟介さんは、それでも、涼しい顔をしてこう言ったの。
「お役人様、その短気が邪魔をして、世の中のことも、この織物のことも、何も見えていないんじゃない。そもそも、この織物は、心清く正き者にしか見ないものなんでよ。」 って、言ったのよ。
「なにおっ! そのような悪口雑言、許さぬ。首をはねてくれる。」 って、お役人は刀をぬいて、上段に構え今にもと言うとき、「まてまて」 って、止める人がいたの。
その人は、お城のお殿様だったのよ。
「騒ぎのわけを聞こう。」 って、お殿様が言うと、役人がかくかくしかしかって、わけを話した。
殿様は「うんうん」とうなずきながら聞いていたの。
話を聞き終わった殿様は、「どれどれ」 って、悟介さんの前にしゃがみこんで風呂敷を持って開いて見たの。
すると、殿様はニコニコ笑って、「その方が、悟介と申すか。それにしても、見事な織物であるな。七色に光って、こするとウグイスとマツムシの声が聞こえる。」 って、言ったの。
「ほーっ、さすがはお殿様だね。この織物の美しさがお分かりになるとは」
「おう、分かるぞ、このような美しい織物は世も初めてじゃ」
「お殿様のお心は、まさに清く正しくござる」
悟介さんは下をむいて、舌を出してにんまりしていたって。悟介さんって、ほんとに、度胸があったのよね。あのね、世の中には「悪知恵」と「方便」という二種類の嘘が歩けど、悟介さんのどっちだったのかしらね?
殿様は、「左様か、わしの心は清く正しいかの?」
[この織物が、殿様の目にはちゃんと見えておられることが、何よりの証拠でござります。]
「これ悟介、この綾織を年貢の代わりに納めたいと申すのだな」
「へい、今年の夏は冷害だったので、村のみんなも年貢のこどですっかり頭抱えています。それで、私が村を代表して、お殿様に、年貢の代わりに、世にも珍しい綾織を献上に上がったわけです。どうでしょう、お殿様、この綾織で年貢の代わりにしいただけないでしょか。」 って、悟介さんは言ったの。
「ほう、それで、この綾織の値はいかほどであるか?」
「そうですね、この綾織を織るのには、十年、山に籠もって、苦労に苦労を重ねました。だから、十年分の値となると三十両もいただければ。」
「三十両か、安いの。ちょうど村に申し付けた年貢の値じゃな。それでは、手間賃として、さらにそちに十両をつかわそう。それでどうじゃ。」
「はっ、はぁ~。」 って、悟介さんは、お辞儀お何回もして、手間賃の十両を押し頂いたのよ。
悟介さんは、年貢を無事納めだほかに、十両を懐にして、村に帰っきたんだって。村のみんなは大喜び! 祭りをひらいで、みんなでお祝いをしたの。
お城では、殿様が天守閣から、祭りの様子を眺めで、ニコニコ笑っていましたとさ。
      どんぴんさんすけ かっぱの屁
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Posted by ほんねず at 08:12Comments(0)山形の民話(標準語版)