2007年11月24日

笠地蔵1 (庄内-方言版)

第一回 (全二回)

「ばさま、ばさま、とんと昔、とんと昔、しゃべてけろ。」
こどもたちの声が寝床から聞こえてくる。
今夜もおばあさんは孫たちにとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心のありようが受け継がれていぐんのだろう。


昔、あったっけど。
ある村さ、仲いいじさまどばさま暮らしたっけど。
今年も、身ば粉にしてづんでね(大変)稼いだど。
んだども、ほんげに暮らしは変わらねで、貧乏でのぉ。
もうじき年越しだ。
正月の祝いの品、揃えんなねぇ。
したはげ、じさまは、朝早く、出がげで行ったけど。
夜なべでこしぇだすげ笠、五つ腰さつけて、一つは自分がかぶってのぉ。
その日は大雪で、まだ止まね。どんどん積もってぇ行ぐはんでの、風もふいで、地吹雪の中、歩いで行ったけど。
したば、道ばたさの、地藏さま、さんび(寒い)そうにの立っていだっけど。
そごさ、じさま通りかがったけど。
じさま立ち止まってのぉ、しげしげどぉ、地藏さまば見っだけど。
雪のなが、さんびそうな地藏さま。
じさま、めじょげねぐ(可哀想に)思ってのぉ、腰さつけっだ売り物のすげ笠、
一つはずして、一人の地藏さまさ付けだけど。
じさま、五づ笠もったけがら、五人の地藏さまさ、笠ばつけでやったども、あど一人、地藏さまいだんだな。
じさまは、困ってなんじょがさんなねなと、ちょっとぎ(少しの間)考え込んでの、ハッとしたのや。じさまは、すぐ、わ(自分)の、笠ばやぐやぐ(わざわざ)ぬいで、一人残った地藏さまさつけだけど。
したば、じさま懐がら手ぬぐい出してほっかむりして、お地蔵さまさ、ふかぶかお辞儀して、「まだの~」って、もど来た道帰って行ったけど。
つづく


この笠地蔵、鶴岡出身の友人のアドバイスを受けながら推敲を重ねてきました。方言の文字化は、苦労しますが、友人と話しながら(当然方言で)、ああでもないこうでもないと、あれこれ考えを進めていく作業は、とっても楽しい時間でした。
もし、この「とんと昔(山形の民話)」を、読んで頂いた方で、方言に興味があったり、詳しい方がいらしたら、ご連絡お待ちしています。ヨロシクですm(。。)m

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