2007年11月23日

笠地蔵 (庄内-標準語版)

笠地蔵 (庄内-標準語版)
第一回  (全二回)

おばあちゃん、おばあちゃん、とんと昔、お話して。
こどもたちの声が寝床から聞こえてくる。
今夜もおばあちゃんは、孫たちに、とんと昔を語りつぐ。
こうして、何百年も人の心のありようが受け継がれていくのだろう。


設定:祖母/はつえ 孫/ゆき(四歳)

今日はなんだか雲行きが怪しいと思ったら、やっぱり降り出しわね。ゆきちゃん、見てごらん、雪がふってきたわよ。
ほんとだ、うれしいな。
ふわり、ふわり、花びらのような大きなぼたん雪が、天からつぎつぎ舞い降りてくるのでした。
はつえさんとゆきちゃんは、二人並んで、庭を見ていました。
しらずにゆきちゃんは、はつえさんの手をにぎっていたのです。

そうだ、こんなお話があるの。と、はつえさんがしゃがみこんで、ゆきちゃんと同じ目の高さになって、庭を見ながら、お話をはじめました。

むかしね、ある村に、仲のいいおじいさんとおばあさんが、暮らしていました。
おばあさんが、こんなひとり言をいいました。
「今年も、いっしょうけんめい働いたの。ほんでも、さっぱりお金たまんね。貧乏暮らしはかわらねの。」
もうじき年越しです。おばあさんは、つい愚痴がでてしまったのでしょう。おじいさんは、だまったまま、おばあさんのひとり言を聞いていました。

そのまま数日がたち、今日は大晦日です。

「しぇば、心ばかりの正月の祝いの品そろえんなねの」と、おじいさんが言うと、朝早く、自分で作ったすげ笠を五つこしにつけて、もう一つ、自分がかぶってでかけていきました。このすげ笠を町で売って、お金にかえ、正月の祝いの品をそろえようというのです。

その日は大雪で、まだふりつづいています。どんどん積もっていくばかりです。風もふいて、おじいさんは地吹雪のなかを歩いていきました。
すると、吹雪のなか、お地藏さまが寒むそうにの立っていました。
そこに、おじいさんが通りかかりました。おじいさんは、ふと立ち止まって、そのお地蔵さまを、しげしげど見ました。おじいさんは、吹雪のなか、いかにも寒そうなお地藏さまが、可哀想に思えたのでしょうか。
こしにつけていた売り物のすげ笠を、一つはずしては、一人のお地藏さまにつけていきます。
おじいさんは、笠を五つこしにつけていたので、五人のお地藏さまに笠をつけていきました。あと一人、お地藏さまがおられました。おじいさんは、困ってどうしたらいいかと、少しの間、考え込んでいたのですが、そのとき、ハッと気がついたのです。おじいさんは、すぐに自分の笠を、わざわざぬいで、一人残ったお地藏さまにつけました。
すると、おじいさんはふところから手ぬぐいを出してほっかむりしてから、いったんこしをのばし、手を合わせながら、お地蔵さまに、ふかぶかおじぎをして、「しぇば、お地蔵さま、風邪などひがねようにの~、まだの~」 と言って、もと来た道を帰って行いきました。

                                  つづく


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