2007年11月22日

「へらへらのへら 3」 (置賜-方言版)

「へらへらのへら 3」 (置賜-方言版)

第三回 (全三回)

ゆめちゃん、ママが作ってくれたオムレツ美味しかったね。おしげばんちゃんも残さずぜんぶたべちゃった。
ゆめちゃんもぜんぶ食べたよ。
腹いっぺ。ふーっ。
今日は日曜だけど、パパとママはご用でおでかけなんだって。
ん、でもゆめちゃんはおしげばんちゃんと、家でとんと昔聞いたり、お絵かきしたりしったほうがたのしいがら………
んだが、今日はいっぺいとんと昔、聞かせでやっからな。
ウワ~ ほんてん。
ほんてんだよ。やくそくげんまん。嘘ついだら針千本のます。
まんず、お茶っこのんで、口のまわりよぐしてがらな。
ゆめちゃんも飲むが?
ん、のむ。
古い火鉢でちゅんちゅん鉄瓶が音たて、静かに湯気があがっている。おしげばんちゃんの隠居部屋は、母屋とは別棟で渡り廊下で行き来する。掘り炬燵に孫と祖母がならんで仲良く時をすごす。
さぁ、お茶はいったよ。あっづいがら気いつけでな。
うん、少しさましてがらのむ。
湯のみ茶碗を両手で包み込むように持ったおしげばんちゃんは、んだらば、昨日のつづきだね。ゆめちゃん昨日の話しおぼえっだが?
ん、おぼえっだ。団子作りのじょんだばんちゃんが、鬼からどごがさらわっで行ってしまって、お地蔵さま、うんまい団子食べらんねぐなって、がっかりしたどこまでだよ。
ゆめちゃんよぐおぼえっだな。
んじゃつづきはじめっぞ。
うん………

………間………

鬼だちが住んでいるどごろは、地獄の三丁目の「鬼釜温泉」ていってな、地元のひとにはけっこう評判がいい。鬼だちは旅館ば何軒かたでで、商売しったけど。人間て言うのは、怖いもの見たさがあっから、最近、噂になって日本全国から客の予約が入ってよ、このどごろけっこう忙しいがったど。
さらわっじゃ、団子作りのばんちゃんは、大きな鍋にお湯がもうもうと沸いているまえさちぇでこらっで、「ほら、ここでままたいでけろ(ご飯を炊いて)」と、鬼からたのまだっけど。
「おい、鬼、まま炊けて言っても、肝心の米がなくてはまま炊がんね。米はどさある?」て、聞いだけど。
「あっ、んだけな。米が。ちょっとまってろ」て言うずど、鬼は自分の人さ指ば、鼻の穴に突っ込んで、鼻くそを一粒まるめで、ばんちゃんさよごしたけど。
「なに、こいづが米だてか? ずいぶん汚いし、一粒ばりあってもままにならね」
「なんだ、ばんちゃんは、なんにもしゃねのが」
「こら、鬼、おらば馬鹿にしたな。だって、ゆんべお地蔵さまんどっからさらわっできたばっかすだものしかたねべ!」
「あらら、ほだけっがしたん。ほいずぁしゃねがった。ほしたらまんず、鼻くそば鍋さほうり込んで、このへらでいっぺんかましてみろ。」って、鬼は、これも大きな木のへらば、ばんちゃんさよごしたけど。
ばんちゃんは、鬼に言われるまま、鬼の鼻くそを鍋さほうりいれ、力いっぱいへらでかましてみだら、これは、不思議。たちまち、鍋のながら、ムクムク、ムクムクって、真っ白い米のまま(飯)湧いできたがど思うど、たちまぢ炊き上がったけど。
ばんちゃん、あまりに見事なまま(ご飯)炊けだがら、こしぬかしたけど。
ほしたら、鼻くその鬼が、ばんちゃんさ、「このへらはな『へらへらのへら』という、世にも珍しい法力もったへらでな、米だけでなくて、鼻くそでも、砂つぶでも、なんでも米に代え、量も万倍に増やしてくれるんだ。このへらは地獄のお宝だぁ。」って、自慢したけど。
ほしたら、まま炊けだってみんな集まってきて、うんまいうんまいって、食ったけど。
あいずぁ、鬼の鼻くそなんだげんともね。
腹すかしったっけ、鬼どもが、きゅうに一杯食ったもんだがら、みんな気ままに寝込んでしまったけど。鬼は腹一杯になっど必ず寝るもんだがらな。
なんだが、ゆめちゃんみでなえ。
おら、ごはん食ったあど、寝だりすねよ。
んだっけな。ほんでも、ばんちゃんは考えだ。この隙だったら、必ず逃げ出せるんであんめぇがってよ。善は急げって言うんで、ばんちゃんは『へらへらのへら』っていうへらばかついで、すたこらさっさど地獄がら逃げ出したど。
地獄では鬼どもが目覚まし、ばんちゃん逃げ出したごど知れで、さっそく追ってばよごしたけど。
追いつ追われつ、どっちも必死、
ばんちゃんは体ちゃっこいがらって、ほんてんすばしっこい。年はとしだげんとも、ほだなごどは関係ね。
しばらぐいぐど、大きな川さぶつかったけど。
看板ば見っど、一級河川「三途の川」って書いであったけど。
ちょうどほさよ、上から、大きな笹の葉、流っできたっけがら、ばんちゃんは迷わず、ほの笹の葉さとびのってにげだっけど。
ほんでも鬼どもは、川のながでもかまわずジャブジャブ走っておっかげで来たけっど。
だんだんによ、おいつがれそうになってきたけど。ばんちゃんは、かついだっけ『へらへらのへら』で、力いっぱい水ばこいでみだんだど。ほしたら川の水いっぺんに万倍になって、鬼だちや、てんでに溺っで、ばんちゃんばおっかげんのあぎらめだっけど。

………間………

無事に村さもどてきたばんちゃんは、とるものものとりあえず、お地蔵さまの前さ行って、おかげでなんとか無事に戻ってきたごどはなしたど。
「お地蔵さま、お地蔵さまのお蔭で、鬼に食われることもなぐ、元気に戻るごどできだがら、今度は、毎日、お地蔵さまさ、団子こしぇで、お供えさせもうがらな。」って言ったけど。
「あどよ、おれ、地獄から『へらへらのへら』っていうへら持て来てしまったげんとも、こいずぁ、返したほうがいいがんべね? お地蔵さま。なんたもんだっす」
「よい、よい。ほいずぁはもうばんちゃんのものだ。返すに及ばず。」って、地藏さまニコニコわらたっけど。
「ははぁ、ありがだいごで………」
「ほのかわり、ほのへらば、自分のためにだけ使ってはならぬ。村の衆のために末永く使うがよいぞ。」

………間………

二・三日して、お地蔵さまの前の広場に、村の衆がおおぜい集まって、笛や太鼓、鉦などもおおぎょうに囃したて、まるでお祭りみでな騒ぎだけっど。
広場のまんながさは、大きな鍋すえらっで、お湯がモウモウ湯気たでで、ばんちゃんは、鼻くそほじくってまるめで鍋の中がさほうりこんだど。ほして、『へらへらのへら』でかますど、たちまち、真っ白いまま炊き上がって、みんなで腹いっぱい食ったけど。
どんぴからりんすっからりん。



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