2007年11月17日

「阿古耶姫 2 」 (村山-標準語版)

第二回(連載二・全四回)
 おばあちゃん、昨日のつづき、早く、早く………
 そうだね、そうしたら話の続きね……
「どなたでござります? わが、館(やかた)になにか御用でも」 と、姫様が、その男に聞いてみたの。
「いえ、ただ、あなたのお琴の音色が、あまりにも素晴らしかったもので、断りもなく気づかぬまま、こんな庭の奥にまで…… 大変失礼を致しました。ご容赦ください。私の名は、名取の左衛門太郎と申します。以後、お見知りおきをお願いしたい。」
「これは、これは、ご丁寧な申し状。いたみいります。私はこの館の主、藤原豊充が娘、阿古耶と申します。」
「さようでしたか。阿古耶姫と申されるか。」
「はい。」
「いいお名前ですね。それで、厚かましいのは承知の上で、もう一つ所望したいのですが……」
「あら、何でござりましょう。もし、私で用が足りるのなら何なりと……」
「では、遠慮なく。もう一曲、姫のお琴と私の笛で、調べを楽しめないでしょうか!」
「オホホホッ。はい、よろしゅうございますとも」
そうして、二人は一緒に曲を奏ではじめたの。
 二人は、時の経つもの忘れて、それこそ夢中になって、曲を弾きつづけたわ。
 いつのまにか、東の空が白み初めていたの。
左衛門太郎は、夜明けが近いことに気づいて、はたと笛を吹くのを止めて、お姫様の前にひざまづいて言ったわ。
「阿古耶姫。今宵は本当に楽しゅうございました。しかし。間もなく夜が明けます。私は帰らねばなりません。」
「な、な、なんと。左衛門太郎殿。お帰りあそばされるのか?」と、お姫様が言うと、よよと泣き崩れてしまったの。
「姫、姫、如何された?」
「いえ、私も今宵のような演奏は、初めてで、身も心もすっかり清められたのですが、左衛門太郎殿が帰られてしまえば、もう二度と今宵のような演奏が叶わぬと思うと、つい泪があふれてきてしまったのです。」
「おお、そのようなことでありましたか。それでは、こういたしましょう。もし姫さえよければ、明晩、また私がこうしてここをお訪ねしましょう。そして、今宵のように二人で演奏しましょう」
「まぁ、嬉しい。本当でござりますか?」
「はい、必ず! では、明晩」と言って、左衛門太郎は帰っていったの。
 そうね、左衛門太郎も帰ったことだから、お話もまた明日ね………
 なんだ、ずるい。おばあちゃんたら。
 ハハッ、とにかくまだ明日ね。


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