2007年11月13日

「阿古耶姫 2 」 (村山)

ばんちゃん、昨日のつづき、はやぐはやぐ………
んだが、ほしたら話の続きな……

「どなたでござります? 当、館になにか御用でも」 って、姫様、聞いだけど。
「いえ、ただ、あなたのお琴の音色が、あまりにも素晴らしかったもので、断りもなく気づかぬまま、こんな庭の奥にまで…… 大変失礼を致した。ご容赦ください。私の名は、名取の左衛門太郎と申す。以後、お見知りおきを願いたい。」
「これは、これは、ご丁寧な申し状。いたみいります。私はこの館の主、藤原豊充が娘、阿古耶(あこや)と申します。」
「左様か。阿古耶(あこや)姫と申されるか。」
「はい。」
「いい名じゃ。それで、厚かましいのは承知の上で、一つ所望したいのだが……」
「あら、何でござりましょう。もし、私で用が足りるのなら何なりと……」
「では、遠慮なく。もう一曲、姫のお琴と私の笛で、調べを楽しめまいか!」
「オホホホッ。はい、よろしゅうございますとも」
ほうして、二人は一緒に曲を奏ではじめだけど。
二人は、時の経つもの忘れて、ほれごそ夢中になって、曲ば弾きつづけだけど。
いずのまにが、東の空が白み初めだけど。
左衛門太郎は、夜明けが近いことさ気づいで、はたと笛吹くのば止めで、姫様の前さひざまづいて言ったけど。
「阿古耶(あこや)姫。今宵は本当に楽しゅうございました。しかし。間もなく夜が明けます。私は帰らねばなりません。」
「な、な、なんと。左衛門太郎殿。お帰りあそばされるのか?」 って、お姫様が言うと、よよと泣き崩れてしまったど。
「姫、姫、如何された?」
「いえ、私も今宵のような演奏は、初めてで、身も心もすっかり清められたのですが、左衛門太郎殿が帰られてしまえば、もう二度と今宵のような演奏が叶わぬと思うと、つい泪があふれてきてしまったのです。」
「おお、そのようなことでありましたか。それでは、こういたしましょう。もし姫さえよければ、明晩、また私がこうしてここをお訪ねしよう。そして、今宵のように二人で演奏しましょう」
「まぁ、嬉しい。本当でござりますか?」
「はい、必ず! では、明晩」 と、左衛門太郎は帰っていったけど。
はい、左衛門太郎も帰ったがらって、話もまだ明日な…
なんだ、ずるい。
ハハッ、とにかくまだ明日。


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この記事へのコメント
絵本のようなデザインで素敵ですね(^^)
お疲れ様です。
これからも楽しみにしています。
Posted by 昭雄 at 2007年11月13日 10:06
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