2007年11月12日

「阿古耶姫 1 」 (村山)

ばんちゃん、ばんちゃん、とんと昔、とんと昔、語ってけろ。
おぼこだの声が寝床から聞こえできだ。
今夜もばんちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、人の心のありようが、何百年も受け継がれていぐんだべな。


笹谷峠って覚えっだが?
覚えっだ。この間、ばんちゃんと一緒に行ったけ「ぼけなし観音」のどごだべ。
んだ、よぐ覚えっだな。今日はよ、笹谷の峠ば越えだ、信夫郡って言うどごさいだっけ、さるお姫様ど、あの千歳山の松の精どの、悲恋の物語ば語って聞かせっかな。ところで、さくら、お前は年なんぼなたのや?
ウフッ! 十二だ。
この間、赤飯炊いだもな。少し大人の話っ子だよ。
ウワ~ッ!
そのころ、信夫郡いったいはな、都から来た藤原豊充卿というお方が治められておってな、豊充卿には「阿古耶(あこや)姫」と言う娘がおって、その器量のよさは、都にまでとどいっだけって言うもな。
ほだい綺麗だっけの?
んだど。ほしてな、姫はよ、お琴もじょんだんだけど。
琴?
あの、ほれ正月に庄屋様のばばはんが弾く、綺麗な音するなあっどれ、あいづば「琴」っていうんだ。
ああぁ、あいづが。おらあの音、好きだよ。
お姫様の琴の腕前も、ほいずぁ素晴らしいっけど。
ある、晩げのごどだけど。いつもの通りままも食い終わって、姫は自分の部屋さ戻って、また、琴の練習はじめだっけど。ちょうどすすきが穂出して、お月様ぁまんまるぐ見えだけど。それはもう、静かな晩でよ、お姫様の美しい琴の音はよ、あの空のお月様までとどぐようだっけど。
ほうすっど、その琴の音さあわせで、どこからが、これまたどこまでも澄んだ笛の音がしてきだけど。お姫様は不思議に思って、琴の手ば休めで、庭ば見だれば、ほさ、若くて様子のいい男、立っていだっけど。
「どなたでござります? 当、館になにか御用でも」 って、姫様、聞いだけど。
「どなたでござります? 当、館になにか御用でも」 って、ワハハッ。ばんちゃん、変だよ!
変だって、何が?
だって、声も言い方もばんちゃんでねもの。
ほだて、お姫様だじぇ、少し声色使って見だべしたん。おもしゃいべ!
ん、おもしゃい。
んだが、ほしたらあんまり長くなっど、読むの大変だがら、この続きはまだ明日。。


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