2007年11月07日

金の目銀の目 (村山)

「ばんちゃん、ばんちゃん、とんと昔、とんと昔、語ってけろ。」
おぼこだの声が寝床から聞こえできだ。
今夜もばんちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心ありようが受け継がれていぐんだべな。

むかし、あったけど。
旅の坊様、山道ば歩いっだけど。
どんどん、どんどん歩いっだけど。
日が暮れて夜になたけど。
どこが、泊まっどごねぇべがと思ったら、谷の底のほうさ、村の灯り見えだっけど。
坊様、ほっとして、早速、村さ行ったけど。
「まんず、今晩、一晩、宿かりらんねべが?」 て、願ってみだっけど。
んでも、ほの家では、「今、客がいで、泊めらんね」 って、断らだっけど。
つんぎの家でも、「寄り合いあって、泊めらんね」 って、言わっだけど。
ほしたれば、「村はずれに空き家になってだお屋敷ある。ほごだれば、誰さも遠慮すねで、宿取れる。」 って、おしぇらっだけど。
坊様はおしぇらっだとおり、行ってみだれば、ほの屋敷、荒れ放題では、まんずバゲモノ屋敷みでぇだっけど。
夜露は体さ障る。ほんで、一日、歩ぎ続け来たがらよ、うんとくたびっで(疲れて)もいだがら、気味悪さば我慢して、家さはいって、いいあんばいの押入れあっけがらそこさつぐもって眠ったけど。んでも、かび臭えし、埃っぽくて、寝づけるわげもねぇっだなね。
ほしたれば、奥の座敷で、ガダッガダッて音したっけど。
坊様はいよいよおっかねぐなったけんども、ほいずあほれ、怖いもの見たさってあっべ、んだがらよ、そっと音するほう見だっけど。
ほうすっど、奥の暗闇から金色と銀色の光が動いできて、囲炉裏端さ座ったみでだっけど。もぞもぞしたれば、囲炉裏さ火熾ぎで、やっと姿わがってきて、ほの姿ば見だ坊様たまげで腰抜かしたっけど。
ほの二つの光は、金の一つ目入道ど、銀の一つ目入道だっけずもな。
囲炉裏の煙で、目ばぱちくりどしばつかせでいっど、なんとも不気味で妖気もめらめらど立ち昇っていで、坊様はぶるぶる震えきたっけど。
ほうすっど、金の一つ目入道が、「クスノ木」
銀の一つ目入道も「クスノ木」 って、大声で叫んださけんだっけど。
「はい、はい」 って、今度は別な声で返事したっけど。
土間の隅っこの暗がりから、わらし子出はって来て、二人の入道の前さ手ばついで挨拶したっけど。
「クスノ木。網わだすど餅っ子持って来い」 って、金の一つ目入道、語っだけど。
「へぃ…!」 って、わらし子言うど、土間の暗がりさ消えで、ずけ、網わだすど餅っ子ば持って来たっけど。
入道二人ぁ、囲炉裏で餅焼いで、たらふぐ食って、「はぁ、腹いっぺいだ。」 って、銀の一つ目入道言ったけど。
「まだ明日くっぞ。」 って、二人の入道が、もど来た奥の座敷の暗闇さ消えで行ったけど。
わらす子も消えだっけげんとも、囲炉裏の火だけまだ燃えっだけど。

……間……

坊様、なんと不思議なもの見だんだべづね。
坊様ぁ、おっかねぇの(怖い)のも忘っでは、かぶり(頭)ばふりふり、しばらぐ考え込んでいだっけげんとも、はっとした顔したっけど。
「クスノ木。クスノ木」 って、今度ぁ、坊様が呼んでみだっけど。
ほうすっど、「はい、はい」 って言って、さっきど同じように、わらす子、土間の隅っこの暗がりがら見えできたっけど。
「あんのな、おら旅の坊主だげんとも、いましがたみでぇな不思議なごど初めででな、たまげだのなんのって、ほんでよ、なじょしてでも、わげ知りだぐってよ、にさ(お前)ば呼ばってみだどごだ。」 って、語っだけど。
ほしたればよ、そのわらす子、顔ば伏せじまって、しくしく泣き初めだっけど。
そういずば見だっけ、坊様、「あらら、なじょしたまんず。なして、泣くのや。おら、にささ悪いごど語ったんだべが?」 って、すまなそうに言ったっけど。
「ほんね。ほだなごどねぇのよっす。」 って、わらす子言ったけど。
「ほしたら、何で泣ぐのや?」 って、坊様、聞いだっけど。
「ほいずぁねっす、あの、金と銀の一つ目入道様だぁは、この家の上段の座敷の縁の下さ埋らっでだ、銭壷の精でござりあんす。ほして、おらはど申しますど、この家の大黒柱の土台石の下さ芽ばだしたクスノ木でござりあんす。とにがぐ、ほんてん長いごど、土の中さ埋らっでいで、お天道様の顔ば見だごどがなくては、ほんで、こだいした姿で、夜毎出てきったっけのよっす。」 って、泣ぎ泣ぎ語ったけど。
「ん~っ、ほだなわげだっけのが。わがった。わがった。ほだらば、おらさまかせでけろ。悪いようにすねがらよ。」 って、坊様、言ったけど。
「んだがや…。んだがや…。いがった、まんず。長いごど待った甲斐あった。ほんてん、いがった。坊様、お願いするっす。」 って言うずど、わらす子は、土間の暗がりさ消えでいったけど。

……間……

つんぎの朝、坊様は村の衆さわげ話て、手伝ってもらって、上段の座敷の縁の下ば掘ったけど。ほうすっど、あのわらす子言ったとおり、大っきい銭壷でてきたっけど。大黒柱の土台石の下さは、ほんてんちっちゃいクスノ木の芽ではったけど。
坊様は、村の衆どはがって、その銭で寺ば建てで、住職さおさまって仏の功徳ば広めで行ったけど。寺の庭さは、クスノ木が大っきおがって、いつまでも見守ってけだっけど。
    どんぴん、さんすけ……


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