2007年10月27日

「貧乏の神と福の神2」 (最上)

「ばんちゃん、ばんちゃん、とんと昔、とんと昔、語ってけろ。」
おぼこだの声が寝床から聞こえできだ。
今夜もばんちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心ありようが受け継がれていぐんだべな。

ばんちゃん、ゆんべのつづき、つづき
んだが、つづぎが… んと、どごまで語っだけがな。
貧乏神が、貧乏神が、泣いだっけどこだじゅ。
んだ、んだ、貧乏神はぁなして泣いでいだんだけがな。
しゃねぇじゅ。なして、なして。ばんちゃん、はやぐ、はやぐ、つづきば

若勢が言ったけど。
「んにゃ、誰だんべ?
「おら、この家の貧乏神」
「なんと、こりゃたまげだ。んにゃ、貧乏神だでが」
嫁っ子が言ったけど。
「あら、おらいの家の守り神様、貧乏神だったんだがじゅ」
「うわ~っ…」
って、貧乏神は、大きな声で、まだ泣き出したけど。
「あらら、なしてほだい泣くのや」
若勢聞いだけど。
「なしてって、んにゃだ夫婦が、あんまり稼いですっかり貧乏でなぐなったさげ、今日、この家さ福の神が来るごどになってる。ほしたら、おら、この家ばぼだされるんだ。この家ぼださっでも、おら行くあてねぇもなぁ。ほだがら、悲しくって、泣いっだどごよ」
「あらら、ほだなごどだっけのが」
「貧乏神様、なんにもおらいの家おん出ていぐごなないよ、今までどおり、この家の守り神様でいでけらっしゃい」
って、嫁っ子も目さ泪ためながら言ったけど。
「んだて、ずげ、福の神くっじぇあ」
「ほだな、福の神なんぞ追っ払ってな、んだ、追っ払え、追っ払え」
若勢は、なんだがごっしゃぱらげで言ったけど。
「んだ、貧乏神様、塩引き焼けだがらよ、一杯食って元気出して。餅もごっつおすっから、力つけで、福の神なんぞ追っ払ってけらっしゃい」
って、嫁っ子も泣きながら笑って言ったけど。
貧乏神は、こだなすんばらしいごっつお食ったごどながったさげな、むしゃむしゃ夢中で食ったっけど。
「うわー、腹いっぱいごっつおなった。この家の若旦那、嫁子殿、ほんてんおおぎぃ(ありがとう)だっけもな」
「いがったなぇ。んだらば福の神追っ払う力ついだべ」
若勢もうれしぐなって言ったけど。
「んだ。んだ。追っ払え、追っ払え」
って、嫁っ子も言ったけど。
貧乏神もすっかり自信ついで、にこにこ笑っていっだけど。

とんとん、とんとん。戸ただぐ音したっけど。
「福の神来たぞ。福の神来たぞ。」
っておっきな声したっけど。
「おお、福の神が。待ってだぞ」
って、貧乏神、表さ出はったけど。
貧乏神ば見だ、福の神はおったまげで
「なんだて、なして、貧乏神いるんだ。んにゃは用済み。じゃまじゃま。ちゃっちゃど去れ。去れじゅ」って言ったけど。
福の神のしゃべっこど聞いっだけ貧乏神は、ごしゃげで
「なにほざぐ、今日はんにゃに負けねぞ」
って言ったけど。
「ほざいでんのはんにゃだべ。ちゃっちゃど去れず」
って福の神はやんだぐなったみでぇに言ったけど。
「貧乏神様、ごじゃごじゃ言ってねで、福の神ばはやっつけろ!」
って、後ろで眺めっだけ夫婦が言ったけど。
そいずば聞いだ貧乏神は勇気百倍。よーしって言って、福の神さ思いっきり体当たりしたっけど。
ほんでも、福の神はびくとしねっけど。
んだて、福の神は毎日ごっつお食って、太っていださげの、立った一回しかごっつお食ったごどない貧乏神ではかなわねもな。ほんでも、今日の貧乏神は別人だ、一回や二回ふっとばさっだて、諦めねで、福の神の腰さくらいついで言ったけど。
「のこった。のこった。」
夫婦は一生懸命貧乏神ば応援したけど。
「あっ、あぶない。」
「ほれ。ほれ。おらだぢついでる。」
「頑張れ!頑張れ!」
福の神は、いづもどすっかり勝手が違って、腹さ力入らなぐて、往生したんだど。
その隙ば見て取った貧乏神は、
「えーいっ!」
とばかりに、力いっぱい福の神ば投げ飛ばしたっけもな。
「痛でっ。痛でっ。こりゃなんとしたこんだ。おら福の神。あっちが貧乏神だっちゅうのに。こだなどごさおらいらんねっちゃ。」
って言うずど、福の神はぁしゃぁますしては、すたこらっささど、逃げで行ったけど。
福の神はぁ、あんまり慌てで逃げで行ったさげ、打ち出の小槌ば忘っで行ったんだど。
ほいずば、貧乏神が拾って、
「ほうれ、米でろ、味噌でろ、金もでろ」
て、打ち出の小槌ばふったれば、あどががら、あどがら、ざっくざっくどお宝ではったけど。
「あら、まんず、いづのまに、こだい立派なお姿に」
って、よめっこがたまげで言うずど、今度は若勢も、
「まるで、福の神さまだぁ」
ってたまげっだけど。
貧乏神は、ほだなごどはじめでいわっださげ、ちょべっとさだげね(恥ずかしく)なったげんとも、もう、しっかり福の神さなっていだっけど。
んだはげ、この家の守り神様は、貧乏神から福の神になって、ずうっとこの家さ住んでいだんだど。
この家は、ますます栄で、村一番の長者になって、夫婦仲良く、福の神と幸せに暮らしたんだど。
        どんぺ、すかんこ、ねぇっけど。  (おしまい)


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