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2007年11月02日

「福の神」 (置賜)

「ばんちゃん、ばんちゃん、とんと昔、とんと昔、語ってけろ。」
おぼこだの声が寝床から聞こえできだ。
今夜もばんちゃんは孫にとんと昔を語り継ぐ。
こうして、何百年も人の心ありようが受け継がれていぐんだべな。

むがし、あったけど。
ある村さ、親切で正直者の夫婦いだっけど。名ば正吉とおみよと言ったけど。
ある年越(としと)りのごどだずもな。その晩は吹雪(ふぎ)でよ、ぼだゆき(深雪)ではぁ、こぐ(歩く)のもたいへんだっけど。
そんげな晩方、めっぽうやつれた顔で、ぼろのなりした爺様が、常口(玄関)ばただいだっけずもな。
「一晩、宿かしておぐやい(ください)、ぼだゆき(深雪)でこがんねっぐってはぁ(歩けない)、しゃあます(往生)してっがらよ」 ってな。
そうすっど、その家ではなぁ、
「まんずなぁ、年越りの晩でせわしいさげ、ぶじょうほだげんとも、まだ来ておぐやい」
て、けちょけちょどこどわらだっけど。爺様はしぇずねぇがったども、ほんでも、また、隣の家さ行って頼んでみだっけど。
んでも、どごの家でもこどわらっで、ほんてんがおってはぁ(がっかり)、なじょしたらいがんべがど思って肩ばおどしてほだゆき(深雪)ばこいで(歩いて)いったっけど。
村はずれまで来っずど、ちっちゃい家の灯り見えだっけど。爺様はさいごの頼みど思って、思い切ってその家の常口 (玄関)ばただいだっけど。このちっちゃい家は、親切で正直者の正吉とみよの家だっけもな。
爺様は寒じぎで(寒くって)、精も魂も尽き果てで、常)口((玄関)ですぐだまったけど(身動きできなくなる)。
「こりゃ、大変だ! みよ手ばかせ。とにがぐ火のそんばさ。」
「あいよ」

「おっ!」 爺様は四半時(30分)もすっずど、気づいたけっど。
囲炉裏でばえだ(薪)、パチパチ音たてでぬぐぬぐ燃えっだけがら、爺様も助かったんだ。
「あらら、どうも、おしょうしなっす(ありがとうございます)」 爺様が気がついで言ったど。
「爺様、こんげな吹雪の晩、さぞ難儀なごどでありぁしたなっす。体の芯まで寒じだんであんめぇが。まんず、風呂でもなんたべね。さら湯(一番風呂)だがらよっす。」 って、おみよは風呂ばすすめだど。
「ほだな、もったいない、おらしぇーずはぁ」 って、爺様は遠慮しったけっど。
「ほだなごどやねでよ、遠慮すねで、ほれ、ほれ、どうぞ。」
「んだがや、なんだて悪いねっす。」 て、爺様はやっとご風呂さはいったど。

「どうもおしょうしな。まんず、風呂はよ、いいやんばいだけなっす。」 て、爺様はぁ、すっかりのぼせでいだっけど。
囲炉裏の縁さは、魚つけだ御膳あって、燗酒もだして、まんずすんばらしいもでなしだっけど。
「爺様まんず、たんとあがっておぐやい」 おみよが酒ついだけど。
「おとっおとっ、まんずおしょうしなっす(ありがとう)」 爺様は、酒呑んですっかり出来上がってきたっけど。爺様、正吉、おみよの三人で、ひとしきり歌って踊って、それはもう楽しがったど。息上がった爺様が囲炉裏の前さどっかど座っずっど、
「今度はぁ、一つおもしゃい話っこぶってみっか。」 っていうたけど。
正吉もおみよも身ば乗り出して聞き耳たてだっけど。

むかし、ある家さ貧乏神住んでいたっけど。
二親は流行病であっけなぐ死んだけずもな。倅は気抜けては、野良仕事もすねで、酒・博打・女郎買いとまぁ、半分ヤクザになりかけだけど。
村の衆が心配して無理やり、嫁っ子世話してむかさりぶったど。
倅は、嫁っ子があんまりめんこいんで、じぎに気ば入れなおして野良仕事さ精出して、たちまち傾いっだっけ家の屋台骨ぴんとたったけど。
その年の年越しの晩、天井裏でしくしく泣く声がしたけっど。
泣くのはだれだぁ? って聞いだけっど。
すっど、おらぁ貧乏神だ。
なして泣いでんのや? って聞いだれば、
この家すっかり金持ちになったがら、ずけ、福の神くっど。
んだど、おらぁ用無しだはぁ、この家出はらんなね。んだがら悲しぐって泣いっだけどごよ。
………間………
おい、貧乏神、にしゃ(お前)はよ、おらいの家出ていぐたいんだが?
ほだなごどない。
んだらさすかいないがら、このままいろは。
んだたて……
んだたてもへちまもね。福の神来たら、にしゃがぼだしてやれ。
んだ、ほれ魚食って、餅食って、干し柿くって力うけろ。
ここの家の倅ど嫁は、なじぇなもんだがそんぴんたかりで、貧乏神ばけしかけずだもな。
そごさやってきた福の神、貧乏神と相撲をとって負けでしまったど。
福の神は慌てて、その家がら逃げ出したっけど。あんまり慌てだもんで、大事な打ち出の小槌、忘っでいったけど。貧乏神はその打ち出の小槌ば拾って、自分が福の神になって、その家ば長者にしたっけずもな。
  どんぴんさんすけ かっぱの屁

貧乏神が福の神になったてが。そいづぁおもしゃい話でねが、なぁおみよ。
んだね、おら、ほだな話初めで聞いだ。おもしゃいね。んでも、ほんてん(本当の)の話だべが?
ずほ(嘘)でねぇよ。 爺様言ったけど。
んだがぁ、んでも貧乏神はいがったね。
んだ、いがったごど。
正吉とおみよは、顔ば見合ってた笑っけど。
んでもよ、爺様の顔は、んと寂しげに見だっけもな。
なしてだべね~?

なんと、おもしゃい話っ子だっけ。
ありゃ、爺様具合でも悪いが? 顔色青ぐして… おみよが聞いたけっど。
あらら、んだな、こりゃお開ぎにして、休んでもらうべは。 正吉も心配そうに言ったけど。
奥さ布団とったがらよ、まんずゆるりど休んでけらっしゃい。 おみよが爺様さ肩ばかして、奥さ休ませだっけど。
爺様はよっぽどくたびっで(疲れて)いだらしぐ、じぎ眠ったけっど。
………間………
つんぎの朝は、正月元旦。きんなの吹雪はずほ(嘘)みだいに日本晴れだっけど。
正吉おみよは、新年も豊年満作を祈って、白いまま炊いて、神棚お供えしたっけど。
してがら、爺様ば起こしたっけど。
「爺様、爺様、白いまま炊けだがら、おぎでおぐやい」 て、声ばかげだんげんとも返事ねぇっけど。
「あら、なじぇしたんだべ」 って、布団ばひっぺがえしみだれば、こりゃおったまげだ。
布団のなが、ピカピカ光って目も眩むほどだっけど。
爺様はなじぇしてしまったんだべね?
ピカピカ光ってんのば、よっくずど見っずど、そいづぁ、見だごどもねぇ大判小判が山になっていだんだけど。腰抜かしたのは正吉どおみよだったのだなね。
あの爺様は、いったい何者だったんだべね。その晩、正吉は庄屋様のどごさ行って一部始終報告したっけど。
庄屋様が言ううには、その爺様は、きっと福の神さまではながったんだべねぇがのって言うたっけど。
      どんぴんさんすけ かっぱの屁  


Posted by ほんねず at 16:21Comments(0)山形の民話(置賜方言版)